SNSで多くの人とつながっているはずなのに、夜、スマホを閉じた瞬間にふっと孤独感が押し寄せてくる。
そんな経験はないだろうか。
既読はつくのに、本音を話せる相手が思い浮かばない。友達は多いはずなのに、いざというときに誰を頼っていいのかわからない。グループチャットは賑やかなのに、そこに自分の居場所がある気がしない。
たくさんの人とつながれることと、信頼できる人がいることは、同じではない。
この違いを考えてみると、「人とつながっているのに、なぜ孤独なのか」が少し見えてくる。
SNSでつながる人数が増えても、信頼できる人が増えるとは限らない
ゴリラ研究で知られる山極寿一さんは、読売新聞のインタビューで、SNSによって情報をより多くの人と共有できるようになった一方、「信頼して共に生きる人」の数は縮まっていると指摘している。
これは、SNSそのものが悪いという話ではない。
SNSがあるからこそ、遠く離れた人とも話せる。昔なら出会えなかった人と知り合ったり、同じ悩みや趣味を持つ人を見つけたりすることもできる。
ただし、情報を共有できることと、その人を信頼できることは別だ。
フォロワーが何百人いても、つらいときに「この人になら話せる」と思える人がいなければ、孤独を感じることはある。
数字の上では賑やかな人間関係に見えていても、その中で誰にも本音を話せていない。
SNSでつながっているのに孤独を感じる背景には、こうした「つながりの数」と「信頼できる関係」のズレがあるのだと思う。
人間関係には時間がかかる
山極さんは、人間が生きるうえで必要なものとして「出会い」と「気づき」を挙げ、社交を充実させる必要があると話している。
そのためには、実際に会って一緒に何かをすることが大切だという。
食事をする。音楽を楽しむ。スポーツをする。
何をするか以上に、同じ時間を誰かと過ごすことに意味があるのだろう。
考えてみれば、人間関係はもともと効率の悪いものだ。
何度も会ったのに、それほど仲良くならないこともある。どうでもいい話を何時間もすることもある。相手のことが少しわかったと思ったら、またわからなくなる。
それでも、一緒に過ごした時間の積み重ねの中で、「この人なら少し話してもいいかな」と思える瞬間が生まれる。
信頼関係は、一度の会話で完成するものではない。
だからこそ、人との関係まで効率だけで考えないことが大切なのだと思う。
SNSをやめる必要はない
孤独を感じるからといって、SNSをやめれば解決するわけでもない。
SNSにはSNSの良さがある。
問題なのは、SNSでたくさんの人とつながっていることを、そのまま「自分にはたくさんの人間関係がある」と考えてしまうことなのかもしれない。
100人とつながっているなら、100人全員と深く付き合う必要はない。
SNSで近況を知る人がいてもいい。趣味の話だけをする人がいてもいい。たまに「いいね」を送り合うだけの人がいてもいい。
その一方で、少ない人数でもいいから、時間をかけて付き合える人がいる。
いろいろな距離の人間関係があっていいのだと思う。
今日からできること
山極さんは、ネットワークを維持するためには、実際に会って一緒に何かをすることが一番だと述べている。また、効率化を求めず、じっくり相手と向き合い、社交や遊びに時間をかけることの重要性も指摘している。
これを毎日の生活に置き換えるなら、大げさなことをする必要はない。
- SNSで気になる人に「いいね」だけでなく、ときには言葉を送ってみる
- 誰か一人と、電話や対面でゆっくり話す時間をつくる
- 食事や散歩、趣味など、一緒に何かをする
- 用件だけで会話を終わらせず、ときには雑談をしてみる
- 会いたいと思っている人がいるなら、先延ばしにしすぎない
全部やる必要はない。
むしろ、「友達を増やさなければ」と考えると、人付き合いそのものが負担になってしまうこともある。
一人と少し長く話してみる。
それくらいからでもいい。
「話せる相手がいない」と感じたとき
ここまで読んで、
「でも、私にはそんな相手がいない」
と思った人もいるだろう。
それなら、無理に「親友」を探す必要はないと思う。
人間関係には時間がかかるからだ。
今日知り合った人が、すぐに本音を話せる相手になるとは限らない。何度か話したり、一緒に何かをしたりするうちに、少しずつ関係が変わっていくこともある。
それに、自分が求めているのがどんな関係なのか、一度考えてみてもいい。
一緒に遊べる人がほしいのか。
たまに食事に行ける人がほしいのか。
それとも、つらいときに本音を話せる人がほしいのか。
同じ「寂しい」でも、求めている相手は人によって違う。
そこがわかるだけでも、「とにかく友達を増やさなければ」という焦りから、少し離れられるかもしれない。
つながりの数より、話せる相手を一人つくる
SNSでは、フォロワー数や友達の数が目に見える。
でも、信頼は数字では見えない。
何人とつながっているかより、誰と時間を過ごしているか。誰になら少し本音を話せるか。
孤独を考えるときには、そちらのほうが大切なのだと思う。
最初から深い話をする必要もない。
何度か話してみる。一緒に食事をする。散歩をする。どうでもいい話をする。
そんな、一見すると効率の悪い時間が、少しずつ人との距離を縮めていく。
今日、何気なく話した誰かが、半年後には本音を話せる相手になっているかもしれない。
たくさんの人とつながることより、一人の人と少し長く付き合ってみる。
SNSでつながっているのに孤独を感じたときには、そんな人間関係のつくり方があってもいいのではないだろうか。
参考文献
読売新聞「『私はサル化する人間社会と呼び懸念している』…ゴリラ研究の第一人者が警鐘を鳴らす分断『SNSで情報を共有できる人数は増えたが、信頼して共に生きる人の数は縮まっている』」2026年1月2日







