実家に帰ると、数時間でどっと疲れる。親から電話がかかってくると、出る前に少し身構えてしまう。
親のことが嫌いなわけではない。それなのに、会ったあとはぐったりして、一人になりたくなる。そんな自分を冷たい人間だと感じてしまうこともあるでしょう。
友人や職場の人とは普通に話せるのに、親の前ではなぜか気をつかってしまう。大人になり、自分の生活を持つようになっても、親子の関係だけは昔のままということがあります。
親といて疲れる背景には、長い年月の中で身についた関わり方や、親と自分の価値観の違いが隠れていることがあります。
今回は、親といると疲れる理由と、大人になってからの親子関係に合った距離の取り方について考えていきます。
親といると疲れる4つの理由
子どもの頃の役割に戻ってしまう
実家に帰ると、何歳になっても「子ども」「長女」「聞き分けのいい子」として扱われることがあります。
普段は自分で判断して生活しているのに、親の前では反論を飲み込んだり、とりあえず謝ったりしてしまう。
子どもの頃から続けてきた関わり方は、大人になったからといって簡単に変わるものではありません。
親の前にいると、無意識のうちに昔の自分に戻ってしまう。そのことが、気疲れにつながる場合があります。
親と自分の価値観が違っている
結婚、仕事、お金、子育てなど、親の世代が当たり前だと考えていることが、今の自分には当てはまらない場合があります。
「まだ結婚しないの?」
「もっと安定した仕事に就いたら?」
何気ない一言でも、繰り返されるとうんざりしてしまうものです。
自分の考えを説明しても理解してもらえない。かといって、何も言わずにいると、親の意見を受け入れたように思われてしまう。
こうした小さなやり取りが積み重なり、会うこと自体が負担になっていきます。
親の機嫌を気にしてしまう
親が不機嫌になりそうな話題を避ける。愚痴を聞き続ける。場の雰囲気が悪くならないように気を配る。
子どもの頃から親の顔色をうかがってきた人は、大人になっても同じように振る舞ってしまうことがあります。
親に何か言われたわけではなくても、表情や声の調子が気になり、落ち着かない。
本来なら気を休められるはずの実家で、ずっと緊張しているのですから、疲れてしまうのも無理はありません。
心配という形で干渉される
親の心配が、子どもにとって負担になることもあります。
「あなたのためを思って言っている」
そう言われると、嫌だと伝えることさえ難しくなります。
親に悪気がない場合もあるでしょう。一方で、心配を理由に子どもの選択を否定したり、必要以上に私生活へ踏み込んだりする親もいます。
親がどのような気持ちで言ったとしても、その言葉を受け取る側が苦しくなることはあります。
親の気持ちを理解することと、親の言うとおりにすることは別の話です。
大人になった親子には、適度な距離が必要なこともある
子どもの頃は、親と一緒に暮らし、生活の多くを親に頼っていた人がほとんどでしょう。
けれども、大人になれば仕事や人間関係が広がり、自分なりの考え方や生活のリズムが生まれます。
それでも親が以前と同じように接してくると、今の自分との間にズレが生じます。
親子だから何でも話さなければならないわけではありません。頻繁に会うことだけが、良い親子関係とも限りません。
月に一度会うことで穏やかに過ごせる人もいれば、年に数回の連絡がちょうどよい人もいます。
反対に、親との関わりをできるだけ減らしたいと考える人もいるでしょう。
親子の距離は、血のつながりだけで決まるものではありません。
これまでの関係や、現在の生活、自分の気持ちを踏まえて考えてよいものです。
親といて疲れるときに試したい距離の取り方
会う時間をあらかじめ決めておく
実家に帰るたびに疲れてしまうなら、滞在時間を短くしてみる方法があります。
例えば、これまで一日過ごしていたところを、昼食を一緒に取るだけにする。泊まりがけだった帰省を日帰りにする。
「今日は3時頃に帰るね」と、帰る時間を先に伝えておくのもよいでしょう。
長い時間一緒にいることよりも、無理なく会えることを優先してみてください。
電話やメッセージの頻度を見直す
親から頻繁に連絡が来ることが負担なら、連絡の取り方を変えることも考えられます。
毎日の電話を週に一度にする。急ぎでない用件はメッセージにしてもらう。
「平日はゆっくり話せないから、日曜日に電話するね」
このように伝えれば、連絡を拒絶するのではなく、自分の生活に合わせた提案ができます。
ただし、親が必ず納得するとは限りません。何度も電話が来る場合でも、緊急の用件を除き、すべてにすぐ応じる必要はありません。
話したくないことは話さなくていい
結婚や収入、仕事のことなど、親に知られたくない話題があっても不思議ではありません。
聞かれたからといって、詳しく説明する義務はありません。
「まだ考えているところだよ」
「その話は今はしたくないんだ」
短く答えて話題を変えてもよいのです。
親を納得させようとして、かえって疲れてしまうこともあります。意見が一致しないまま会話を終えるという選択もあります。
会ったあとは一人の時間をつくる
親と会ったあとに疲れが出ると分かっているなら、その日は予定を詰め込まないようにします。
家で好きな本を読む。散歩に出かける。何もせず静かに過ごす。
自分が落ち着ける時間を確保することで、気持ちを切り替えやすくなる場合があります。
疲れを感じる自分を責めるよりも、どのような過ごし方なら負担が少なくなるのかを知っておくことが役立ちます。
親と距離を取ることに罪悪感があるとき
親との距離を考えるとき、難しいのが罪悪感です。
「育ててもらった恩がある」
「親もいつまでも元気ではない」
「もっと会っておけばよかったと後悔するかもしれない」
こうした思いから、無理をして会い続けている人もいるでしょう。
親を大切にしたいという気持ちは、決して否定されるものではありません。
ただ、その気持ちがあるからといって、自分の生活や心の余裕を犠牲にし続ける必要があるのでしょうか。
会うたびに言い争いになるのであれば、少し間隔を空けたほうが、穏やかに話せることもあります。
距離を置いたことで、かえって親のことを落ち着いて考えられるようになる人もいます。
一方で、距離を取ったあとも罪悪感が消えないことはあります。親との関係に長年悩んできた場合は、なおさら簡単に割り切れるものではありません。
無理に気持ちを整理したり、すぐに結論を出したりしなくてもよいと思います。
親との関係が大きな負担になっている場合
親との関係によって、日常生活にまで影響が出ている場合は、家族の中だけで解決しようとしなくても構いません。
例えば、次のような状況です。
- 暴言や人格を否定する言葉を繰り返し受けている
- お金の援助や借金の肩代わりを強く求められている
- 親の介護によって、自分の生活が成り立たなくなっている
- 親と会う前後に、眠れない、食欲がなくなるなどの状態が続いている
介護に関する悩みは地域包括支援センター、生活上の問題は市区町村の相談窓口などに相談できます。
心身の不調が続いている場合には、医療機関に相談することも選択肢です。
親子の問題は家庭の中だけで解決しなければならない、という決まりはありません。
親との距離に、ひとつの正解はない
親といて疲れる理由は、人によって異なります。
親の言葉が負担なのか。子どもの頃からの関係が影響しているのか。それとも、大人になってから価値観が変わったためなのか。
親を嫌いになりたいわけではなく、ただ穏やかに付き合いたい。それだけなのに、うまくいかないこともあるでしょう。
親子だからこそ、簡単には説明できない感情があります。
今すぐ関係を変える必要はありません。これからどのくらいの距離で付き合っていきたいのか、自分の気持ちを確かめるところから考えてもよいのではないでしょうか。
誰にも相談できず、親との関係について一人で考え続けている方もいると思います。
「こころのよりみち」は、そうした気持ちを言葉にできる場所のひとつです。
答えを急がず、今感じていることを、そのまま話していただけたらと思います。






